丸井 ::: PC



学校が終わって、帰宅部の私は即行家に帰る。そりゃもう誰よりも早く。理由は簡単、早くPCやりたいから。あの芸能人のブログは更新されたかな、とか自分のブログにはどんなコメントがあるかな、とか。まぁ、それ以外にも理由がないわけじゃあないけど。

「たっだいま〜」

家に帰って、しーんとした家にいつもの挨拶をする。親は共働きだから、これに返してくれる人はいない。
そう、人は、だ。ばたばたと二階から聞こえる足音。そしてひょこっと見えたのはよく知っている私のPC。

「お、やっと帰って来たのかよぃ。おせーぞ」
「あのね、これでもけっこう早い帰宅なんですけど!」

私の挨拶に、文句を返してきたのは、私の愛用のPCである丸井ブン太。ちょっと口が悪くて、お菓子が大好き。けど何故か太らない。デブにならないのが不思議。家で運動してるのかなと思ったけど、何の運動をするんだという結論に至って、いまだに正解は見つからない。もし体質なら、私に分けてほしい。切実に。
部屋に戻って鞄を置いて一息つく。早くブログも見たいけど、やっぱり家が落ち着くなぁって思ってベットに横になったら丸井に叩かれた。少しくらい横になってもいいじゃん。

「丸井ーネット繋げてー」
「うわ、もの頼む態度じゃねぇ」
「いーじゃん、ちゃんとお菓子持ってくるんだし。ほらほら、繋げた!」
「なんか不屈だけど…。はいはい、わかりましたーっと」

そういって丸井はしばらく静かになる。本人曰く、集中しないとうまく繋げないんだとか。そして私は彼がネットワークにつなげようとしている間に、お菓子をとってくる。これも本人曰くだけど、こういう起動したりするために集中力を使うと腹が減るらしい。つまり、丸井ブン太には電気の代わりに食べ物が必要だということ。なんだか不思議な話。一時期ほんとかどうか疑ったことがあって、お菓子をあげまいとしてたら起動してくれなかったことがあるから、その真偽はいまだ不明。

「あー、繋がったぜぃ」
「ん、ありがと。はい、今日はポテチ」
「おっ、コンソメじゃん!さんきゅー」

そういって嬉しそうにポテチの袋を開ける丸井。丸井がポテチを食べてる間、私は彼を通じてサイト巡りに励む。おぉ、芸能人のブログ更新されてんじゃん!ラッキー!

「あー、ほんとかっこいい。目の癒し」
「…お前、そんなんがいいわけ?」
「そんなん!?」

いつもならお菓子をあげると食べ終わるまではほとんど喋らない丸井が、口を開いた。でもポテチを口に運ぶ作業は止まらないままで。喋るなんて珍しいな、なんて思いながらでもその内容は私の好きな芸能人の悪口で。私は早口で言い返す。

「何言ってんの丸井このかっこよさがわかんないわけ?こんな美形なかなかいないよ!」
「いんじゃん、目の前に」
「…はい?」

あっさり返ってきた答えに思わずきょとんとする私。そんな私に対して、丸井は指を舐めながら、「だーかーらー。ここにいるじゃん、俺が」と、いつもは見せない笑みを見せる。そのいつも違ったそれに、思わずどきりとしてしまう。な、何私は丸井にときめいてるんだ!

「別に、あれのブログなんか見なくたって、俺がいるっての」

てなわけで、ゲームしようぜゲーム!
そう言ってすぐに、ポテチを口に含みながらゲームの起動をする丸井。まだブログ見たりないとか、他にもしたいことがあるとか、というかまず勝手に画面変えるなとか、いろいろ思ったけど、なんの反論もできずしまいになった。しばらくしてから丸井からポテチを拝借して、一口齧った。
嬉しそうにゲームを起動しようとしている丸井。正直丸井相手にゲームで勝てる気なんて全くしないけど、たまにはゲームもいいな、なんて思った自分がいた。







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