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穏やかな昼下がり。ある喫茶店で2人の男女が向かい合って席についていた。片方は優雅にコーヒーを啜る六道骸。そしてもう1人はおいしそうにケーキを食べる。2人の間には、のんびりとした空気が流れていた。 まるで、2人ともが一般人のよう。 「六道さん、ここのケーキすごいおいしいですね。この紅茶とよく合いますよー」 「本当ですか。ここへ連れてきて正解でしたね」 「もう少し早く教えてくれれば、1人でばんばんきてましたよ、絶対」 「クフフ、そんなに気に入ってもらえるとは」 すぐ横を通った店員に、追加の注文をする。その注文の量を聞いた骸は少し驚きながらも、店員がさった後、 に尋ねてみると「今までの分です」と、当たり前のように返された。骸が一瞬、今日が自分のおごりではない事を確認するくらいに、あっさりと。しばらく少しと他愛もない会話をしてから、ゆくっりと骸は息を吐き出す。 ここからが、一番の山場だ。最も体力のいるところ。 「。そろそろ、本題に入りませんか?僕がをここに連れてきた理由です」 「え、私にここのケーキを教えたかったんでしょう?とてもおいしいですよ。 特にこのチョコケーキ、見ているだけで幸せになりそうです」 「ええ、実はそのケーキ、僕のお勧めなんです。…って、違います。、いつまで話を逸らす気ですか」 骸は小さくため息をつく。これだから、と話すのは疲れる。は話を逸らして自分のペースに変えるのが巧い。今までも、いつもさりげなく聞きたいことをかわされてきた。 だから、今日こそは聞かなければならない。わざわざ、2人っきりにしたのだから。 「。単刀直入に聞きます。なぜ、僕たちを助けたのですか?」 「…何のことですか。あ、もしかして、この前のキッチンでのこと…」 「があの時僕らを放っておけば、貴方は元の世界へ帰れただろうに」 「!」 その台詞を聞いた途端、の肩が揺れた。そして骸はその瞬間を見逃さなかった。 骸は続けて言う。 「貴方はボンゴレ側にいたはずです。貴方は違う世界から来ました。そして、さっきも言った通り、 私たちを助けたために元の世界に戻れなくなった。違いますか?」 「…」 は何も言わず、顔を俯けている。しかし骸はそんなこと気にしない。今、この機会を逃したら、二度ときけなくなる気がした。 が、自分たちを助けたその理由を。 「黙っていても変わりませんよ。今日はそれを聞くまで帰しません」 「…なんで、そんなに聞きたがるんですか」 ようやくが口を開く。ただしそれは、骸に対する質問だったが。骸は気にせずにそれに答える。 「簡単です。利害が一致しない。自分の故郷が捨てれるほどの、それなりの理由があるはずです。 その理由が気になる。ただ、それだけです」 「…なら、私が六道さんたちを助けたかったから、では、駄目なんですか?」 「…本当に、それだけですか」 「…」 または黙り込む、骸は半分あきらめていた。ここまで問い詰めても答えられない、とても人に教えれることができない理由なのか。 この前の事。黒曜ランドでボンゴレ10代目側に負けた3人を匿ったのは、だった。が、復讐者の目をくらましたおかげで、骸たちが捕まらずに済んだ。何をしたのかは骸たちにもわからないが、復讐者を騙すほどだ。相当のことをしたのだろう。 そして骸はに何度もそのことを聞くが、なぜか教えてくれない。だから、今日、こうやってから聞けれるように計画したのだ。わざわざが気に入りそうな喫茶店を調べて、2人っきりにしてまで。 骸が回想していると、が顔をあげた。その眼には、決意があった。 「…答えは簡単ですよ。六道さんたちが捕まったら、城島くんと柿本くんを連れてまた脱獄しようとするでしょう。 けれど、それは失敗に終わります。そして、六道さんは自分が囮になり他の2人を逃がし、1人で地下の復讐者の牢獄に閉じ込められます。最低でも、10年はそのままです」 「…、それは、嘘ではないんですか」 「信じるか信じないかは、六道さん次第ですよ」 骸はの目を見る。その目は、嘘をついているようには見えなかった。 ふぅ、と息をつき、骸はいつの間にか入っていた体の力を抜く。 「そんな未来が、待っていたんですね…」 「私の話、信じるんですか」 「ええ。ただ、まだ若干納得がいきませんが。どうしてその未来が、僕らを助けることに?」 骸の質問には目を逸らす。言いにくそうにして、時々骸の様子を伺う。そんなの行動に疑問を持つが、おとなしく答えを待ってみる。 すると今度は簡単に教えてくれた。さっきとは違い、目を逸らしたままだが。 「…六道さんが捕まったら、悲しむ人がいるからですよ」 「…思い当たる人がいませんが」 「いいんです、わからなくったって」 そう言って、はケーキを食べ始める。この話はこれで終わり、とでも言うように。今度手を伸ばしたのは、 苺の乗ったショートケーキ。まるで今までの重たい空気がなかったかのように、ぱくぱくと食べていく。 「わ、これもおいしい」 はそういって手をすすめる。このケーキは本当にの胃の中に入って行っているのかどうか、 思わず尋ねたくなる食べっぷりだ。 骸はコーヒーを啜り、外を眺めた。まだどこか、釈然としなかった。 自分が捕まったら悲しむ人がいる?その為だけに、自分の故郷を捨てたというのか。それが本当なら、ボンゴレに負けない、お人よしだ。それとも…。 「…それに、貴方のいる、この世界が好きになったんですよ」 骸はを見る。 さっきと変らないペースで食べているを見れば、さっきの言葉はただの空耳のように思われる。 だが、それは違う。さっきの声は、確実にだった。 「クフフ、も相当なばかですね」 「…それは、ひどいです」 そう言って、拗ねたようにまた一口、ケーキを口に運ぶ。 誰もここに、犯罪者と異世界人がいるとは思わないだろう。
喫茶店の非一般人
少しして運ばれてきたケーキの量に、骸はしばらく口が閉じれなかった。 |