最近、俺の彼女のの様子がおかしい。いつも何か考え事をしていて、俺が話しかけても気づかないことが何度もある。話している時も、たまに別のことを考えている時がある(そういう時は大抵返事が適当になるからわかりやすい)。
それに気づいてから彼女の様子を見ていると、何やらいろんな人に何かを聞きまわっている。内容は分からないけど、重要なのは聞く相手がほとんど男だということ。昨日は侑士と話ししているところを目撃してしまった。俺には聞かないのに。彼氏なのに。そう考えると、気分は下降するばっかりだ。

「岳人?どないしたん?」

そんな俺の状態に気付いたのか、侑士が尋ねてくる。今は部活が終わって、部室で着替えてる最中。ロッカーが隣だし、ダブルスのパートナーだし、俺がいつもと違うことに気づいたんだろう。…お前も俺のいら立ちの原因の一つだっての。てか侑士じゃなくて、俺の落ち込み、早くに気付いてほしい。そんな心の声は侑士には通じず、目の前の伊達眼鏡は心配そうにこっちを見てくる。
一つため息をついてから、最近の彼女について話すことにした。どうせ侑士に隠したって無駄だろうし(まず引き下がらないと思う)、に何を聞かれていたのかが、やっぱり気になる。部室内はレギュラーの話し声とかで静かじゃないから、普通に話してたって大抵誰も聞いちゃいない。聞かれて困る内容でもないし、いつもどおりの口調で話し始めた。
話し終えると侑士は「あー」とよくわからない声を出す。何なんだ。

「何だよ」
「いや、な。何聞かれとったかは言えへん。口止めされた」
「…お前もか」
「直接さんにも聞いたん?」
「もちろん。なんでもないってしどろもどろに言われた。嘘ってことがバレバレ」
「…さん、隠し事下手そうやしなぁ」

俺はまたため息。ダブルスパートナーの侑士に聞いても教えてくれなかった。パートナーに秘密だなんて、ひどい奴。…に口止めされてるからだけど。

「まぁ、安心し。すぐにわかるで」

すぐっていつだよ。そんな意味を込めて、またため息。そんな俺に侑士は苦笑い。きっと、教えたいけど教えれないって感じなんだろうな。
すると、部室のドアが開く。入ってきたのは宍戸と鳳。自主練をしていたんだろう。お疲れ、と声をかけようとする前に鳳と目があう。その時の鳳の目は探し人を発見したような目で、思わず首をかしげる。

「お疲れ。どうした?俺に何か用でもあったか?」
「あ、お疲れ様です。でも、違うんです。用事があるのは俺じゃなくて…」
「岳人ー、お前にお客さんー」

鳳の声を遮る間延びした宍戸の声。俺に客?誰だ?と思い、宍戸の指さす方向を見てみると、そこには俺の悩みの張本人。思いもよらないお客さんにボタンを閉めていた手が止まる。いつも俺の部活が遅くなるから、待たせずに大抵先に帰らしている。もそれを承諾している。
…え、なんでいんの!?

「ちょ、ちょっと待ってろ、今行く!」
「ははっ、岳人焦ってんの」
「早くせな、彼女さん帰ってしまうで」
「てめぇらうるせぇ!」

おろおろする鳳に、茶化す宍戸、心配してるのか、それとも宍戸と同じく茶化しているのかよくわからない侑士。そんな奴らに囲まれながら急いで着替える。とはいっても、もうボタンを閉めるだけだけど。それでも慌ててしまって、ちょっとだけいつもより時間がかかった気がする。宍戸が何か言ってたけど、そんなもん無視だ。
部室を出る時、侑士が耳元で「えぇ彼女もったなぁ」って言ってきた。俺の部活待っててくれたことをさしてるんだな、と勝手に解釈してのもとへ行く。

「待たせた!わりぃ」
「ううん、勝手に私が待ってただけだし…」
「んじゃ、帰っか」
「うん」

そう言って歩き始める。校門を過ぎ、しばらく無言で歩く。正直、のことで悩みを持ってる俺からすると、この無言は辛かった。久しぶりに二人きり、というのもあるし。でも、だからと言って何を話せばいいのかもわからない。いつもはこんな悩まないのに。
うじうじしてるって、俺らしくないな…。そう思っていると、彼女から声をかけられた。思わず上ずった声がでる。

「が、岳人くん?」
「なんでもねぇ!…で、どうした?」
「あ、えっとね。…明日、岳人くん誕生日だよね…?」
「え?」

明日?
頭に疑問符が浮かんでいる俺にが慌てて付け足す。

「今日、11日だから…」
「あぁ、ほんとだ。俺、明日誕生日じゃん」
「もしかして、忘れてたの?」
「きれいさっぱり。部活が忙しかったし」
「えと、それで…これ」

がそういって鞄から取り出したのは、丁寧に包装されたシンプルな箱。すぐにから俺へのプレゼントだってことがわかった。さっきまでの暗い気分なんて吹き飛ぶくらい、すごい嬉しい。でも、ふと俺はそれに待てをかける。確かに、俺の誕生日は明日だ。なのに、俺にプレゼントを今?
またまた疑問符を浮かべていると、がおずおずといった感じで話し始める。時々俺の様子をうかがいながら。どうしよう、かわいい。

「ほんとは明日渡そうと思ってたんだけど、岳人くん人気者だから他の人からもいっぱいもらうよなぁ、って思って。忍足くんに聞いてみても去年そうだったらしいし」
「…え、侑士にそれ聞いてたの?」
「あ、見てたんだ…。そうだよ、ちゃんと答えてくれた」

侑士、だから俺の質問には答えられなかったんだな…。

「それで、なら前日の今日渡そうと思って」
「なんでだ?」
「明日の岳人くんの荷物が少しでも軽くなったらいいな、って」
「別に気にしなくても平気なのに」
「あと、正直言うとね」

もう少しで、の家に着く。でも、もう少し話してたいから、お互いの歩調がゆっくりになる。が、もったいぶったように一旦区切る。もちろん、としてはもったいぶってるんじゃなくて、言いづらいんだろう。話し始めてから俺のほうをちょくちょく見ている。…やっぱりかわいい。

「私のプレゼント、他の子のと一緒にされたくなかったし、岳人くんが明日になってすぐに開けたら、私が一番最初にプレゼントあげたことになるかなと思って…。ただの自己満足だけどね」
「…」

いろんな意味でのストレートパンチ。なんって返せばいいかわからなかった。ただ、嬉しかった。すごい、嬉しかった。としては自分の言ってることはわがままって感じてるんだろうけど。そんなことなら、全然許せる。むしろ、やっぱりかわいいと思える。
嬉しい気持ちをそのまま声にだす。思ったよりでかい声が出たけど、気にしない。

、ありがとなっ!すっげぇ嬉しいぜ!」
「うん。よかった、喜んでくれて」
「今日、帰ってからソッコーで開ける!」
「え、駄目だよ!それは明日になってから!」

それから、数分しかかからないの家まで、二人で笑いあって帰った。今はこうやって普通だし、彼女の様子おかしい原因は、なんとなくわかった。だから、俺の悩むことなんて、もう解消済み。侑士の言ってた意味もわかったし。
俺って幸せもの、なんて思った数分間の帰り道。


ハレルヤ!


家に帰ってから、やっぱり他の男とは話してほしくないなぁ、って思った。
それから、他の男には何って質問したのか、聞いてないことに気付いた。
…ま、いっか!