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「あ、あった…!」 学校の帰りで寄ったCDショップ。そこではとある棚に手を伸ばした。手に取ってみると、それはやっぱりの探していたCD。それはマイナーなのか、どの店に行ってもなかったもの。予約しておけばよかったと後悔を重ねて、探してから一週間目、ようやく見つかったそのCDに思わず頬を緩める。 「うわぁ、ほんとよかったー…」 「何が良かったん?」 「え…うわぁ!」 の独り言への思いもよらない返事。条件反射で振り向くと、そこにいたのはの学校の超有名人。テニスがうまくて、詐欺師で、よくわからない方言を使ってる、銀色の髪が特徴の仁王雅治。加えて言うなら、と同じクラスで、さらにはつい先日の席替えで隣の席。席が隣になるまでは会話もしなかったが、仁王が何かとからかってくるため、接点が増えた。(本人としてはファンクラブの目がとても恐ろしいのだが。) 「なんじゃその反応。酷いぜよ」 「いや、普通驚くから。真後ろにいて急に話しかけるとか駄目でしょ…」 「プリッ」 「あ、ごまかした」 はぁ、とはため息をつく。仁王と話すのには、ずいぶん疲れるのだ。よくわからない仁王語を使い、詐欺師と呼ばれるだけあって、人を騙すのが巧い。席が隣になってからまだ日は浅いのにの関わらず、仁王に何回騙されたことか。「コート上のペテン師」と呼ばれてるんだから、そんなことテニス以外でやるなよ、といつも思ってしまうのは仕方がない。そんな学校での仁王の詐欺師っぷりを思いだし、再びため息を吐きそうになったに、仁王が「あ」と呟きを洩らす。 「お前さん、そのCD…」 「え、これ?マイナーだから仁王わかんないと思うよ…」 仁王の熱視線と指が指す延長線、そこには先ほどが見つけたCDがあった。仁王の手が無言で渡せと言っていたので、大人しく差し出す。差し出されたCDの、アーティストが誰で、中身の曲は何か。それを確認した仁王の顔が、みるみる驚きに変わっていった。そしてはそんな仁王の表情の変化に内心、おぉと静かに驚いていた。あんまり仁王の表情変化を見たことがない。別に仁王のファンでも、テニス部のファンでも特には無かったから、彼らがどんな顔でどういう性格なのか、ほとんど知らなかったのだ。仁王と会ったのもクラスが同じになってからだったし、まじまじと顔を見たのも席が隣になってから。をからかう時なんて、大抵作ったような笑い方だから、こんな自然な仁王に新鮮を感じた。 「…、このアーティストしっとるん…?」 「う、うん。…仁王もしかしてこのグループのファンだったりする…?」 「…おん」 「ほんと!?私もだよ!同士発見!」 ぱぁっとの顔が輝く。なんせ、初めてこのグループを知ってる人に出会えたのだ。友達に聞いても「誰それ?」「知らない」のどちらかしか返ってこなかった。身近に知ってる人がいるとは思わなかったは、若干興奮しながら話し始める。 「ここのボーカルいいよね!胸に響く!」 「ボーカルもじゃが、ギターだって負けとらん。この2つがあわさるからいいんじゃ」 「うんうん!あ、一番最近のバラード知ってる?」 「ボーカルの彼女さんへの曲やろ?あんなんファンなら誰でもしっとるぜよ」 仁王もと同じなのか、いつもよりもやや饒舌になる。他のお客さんの目も気にせず、しばらく二人でそのグループについて意気投合していると、が思い出したように仁王に尋ねた。 「あ、もしかして仁王もこのCD目当てでここに?」 「もちろん、それ以外に目的がなか」 「あー…やっぱりそうか」 「ん?」 途端に言葉を濁すに、首をかしげる仁王。というのも、実はCDはが持ってるので棚にある分は最後なのだ。店員に聞いても、多分これしか置いてないだろう。マイナーの悲しい性質だ。だがせっかく初めて同じアーティストで盛り上げれたのに、自分だけそのCDを買うというのはなんだか罪悪感が残る。 がCDがこれしかここにはおいてないという旨を正直に話すと、仁王も納得した。 「あぁ、そういうこと…」 「うわー、マイナーってこういうところあるんだよねぇ」 「でもマイナーのままでいてほしいの」 「あ、わかる。…ネットで買うかぁ」 そう言って、名残惜しそうにCDを見つめる。せっかく見つけたのになぁ、と思ってると、仁王が不思議そうな顔をする。「なんでネットで買うん?」という仁王に、も「え?」と戸惑い気味に返事をする。そんなに仁王もハテナマーク。 「お前さん、ここで買わんのんか?」 「…え、だって仁王買うでしょ?」 「いやいや、先見つけたのじゃろ。俺がネットで買うぜよ」 「えー、なんか罪悪感ある。悪いって。仁王買いなよ」 「それじゃ俺にお前の言う罪悪感がある」 「あー…そっか」 でも、買わずに残しておくのもなんだかなぁ、と言ってはCDと睨めっこ。さて、どうしたものかと思考したところで、ふと先日の仁王の誕生日のことを思い出した。あの、席替えをした翌日のプレゼントが山になった机に、その隣にある袋に溢れんばかりの同じプレゼントの山。その日は「ありえない…」と思って見てたそれら。ガン見したら、仁王もの思ってることがわかったのだろう。軽くため息を吐いて、 「毎年こんなもんぜよ」 と、他の男が聞いたら嫉妬するような言葉を吐き出したのだ。そのあとに続いた、 「お前さんもくれるん?」 には、こいつまだ欲しがる気かと純粋に思った。まぁ、それがきっかけで仲良くなったのだが。 そして、そういえば自分は結局仁王に何もあげてないなと思った。あのプレセントの量を見て何かあげる気になれなかったし、まず何を上げれば仁王が喜ぶかなんてわからなかったのだ。そこまで思考に及んだ時、頭に浮かんだ案。実行しようと思ったのに、コンマ数秒もかからなかった。 「ねぇ、仁王。これ欲しいでしょ?」 「おん。欲しいけど、お前さん買いんしゃい」 「うん、わかった。私買ってくる」 仁王の返事に満足したは、仁王の袖を引っ張る。急によくわからない行動をしたに、何すんじゃと呟く仁王。それに対してただひたすら「いいからいいから。とりあえずついてきて」と言ってカウンターまで引っ張る。会計を済ませるに、黙って傍にいる仁王。店員の「ありがとうございました」の声をBGMに外を出た途端、黙っていた仁王がぽつりと言った。 「…お前さん、一人じゃものも買えんかったんか」 「違いますー。私そんなに子供じゃない」 「ほー、この身長で?」 「仁王が高いだけでしょ!」 私はあくまで平均身長!と言って仁王を軽く叩く。しかし全く痛くないのか、の小さい怒りに対して、仁王はケラケラ笑うだけ。はぁとため息を小さくついてから、仁王にさっき買ったCDを差し出す。 「はいこれ。仁王欲しかったんでしょ」 「…え、お前さん買ったじゃろ?なんで俺に?」 「仁王誕生日だったじゃん。私何にもしてないし、ちょうどいいかなって」 「…たまにはいい奴じゃの、って」 「うわ、たまにってひどくない?」 あからさまに傷つきましたという顔をするに、また笑い出す仁王。それでもちゃんと仁王はCDを受け取ってくれて、は少し安心する。それじゃまた明日、と言って踵を返そうとするが、「待ちんしゃい」と腕を掴まれる。一瞬はCDを返されるかと思ったが、それは杞憂に終わった。 「は、どうするん?」 「え?あー…。考えてなかった。ネットで買おうかな」 「馬鹿じゃろ。…貸したる」 プレゼントのお礼、と言ってに渡す仁王。「新品私が開けてもいいの?」と慌てるだが、仁王の「別にどっちが先開けようと中身はかわらん」という言葉と、その先に続いた「お前さんの金じゃし、プレゼントの礼」と笑う仁王に思わずにも笑み。即興すぎるプレゼントだったけど喜んでくれて、そのお礼ということなら喜んで。そんな意味を含めて、 「うん、ありがとう」 そう言ったに、仁王はの頭を撫でるだけ。その仕草といつもの仁王に合わない穏やかな顔を見たら、なんだかあのプレゼントの山がちょっとだけ理解できるような気がした。
(Congratulations,MASAHARU NIO!!)
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