彼女 と 後輩




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「赤也、中学で待ってるからね。弱くなってたりしたら承知しないから」

が中学に上がる前、赤也に言った言葉がこれだった。
テニススクールで知り合い、意気投合し仲良くなった一つ上のライバル。赤也は彼女に勝てたことがなかった。いくら試合を挑もうとも、彼女のカウンターにはどんな球も返された。赤也が小学6年になると、彼女は中学へ上がってしまう。それは赤也を焦らせた。自分は彼女から一度も勝ちを奪うことが出来ずにおわるのか、と。いくら試合をしても、結果は変わらなかった。テニススクールでしか会えない2人は、彼女が中学に上がりテニススクールをやめることによって、もう会える可能性は無かった。赤也が彼女と同じ中学に行かない限り。
そんなときに言った彼女の、赤也を待っているという発言に、本人は茫然としたが、すぐにいつもの調子を取り戻した。

「はっ、そっちこそ。俺が中学に行くまで待ってろよ!次の試合こそアンタを負かす!」

彼女はその言葉を聞いたとたん、にっこりと笑った。そして、短く答える。

「上等」

赤也はこのやり取りを、一年間、彼女がいない間ずっと忘れずにいた。彼女のその言葉を脳内で繰り返し、彼女から勝ちをもぎ取ってやろうと思っていた。周りに赤也と対等に試合ができる人間がいなかったから、よく他のテニススクールに足を運び、そこで一番強い奴と試合をしたりした。赤也は、中学にあがった彼女との試合だけを思っていた。

それから、一年。
赤也はと同じ立海付属大中学へ進学した。
しかし、赤也の期待とは裏腹に、に会うことはなかった。

*********

「…くそっ、、あいつどこにいんだよ…」

赤也が中学生になってから数か月が経った。
それでも、赤也は学校でを見かけることはなかった。女子テニス部に入部した女子にという人物を聞いても「知らない」という返答ばかり。最初のうちは「強くなった俺から逃げてるんだな」と思っていたが、数か月も経つとそう考えらなくなってきていた。二年生のクラスに自ら行こうとしても、それは叶わない。それは、他学年のクラスの教室に行ってはならない、というきまりがあるからだ。赤也としてはそんな事は無視して行きたいところだが、先輩の目、というものがある。ただでさえ、英語の点数が壊滅的で目をつけられているというのに、これ以上なにかしたら先輩からの嫌な説教が待っている。それは勘弁だった。

「なーんだよ、赤也。何ため息ついてんの?」
「うるせぇ」
「うっわ、ひでぇ。せっかく心配してやってんのに」

同じクラスの友達が話しかけてくる。前にこの友達にも同じようにについて聞いたが、いい答えは返ってこなかった。

「あっ、もしかして、女か!?」
「だーかーらー。うるせぇっての」
「おっ、あたりだな!?あのいろんな奴に聞いて回った、とかいう人だろ?」
「もー、お前一旦黙れ」
「なぁなぁ、どんな人なわけ?お前がそんなに聞きまわるってことは、めっちゃくちゃ美人?」

赤也はため息をついてから、友達を無視し始める。そんなことは気にせずに、彼はひたすら赤也の隣で口を動かす。
――どんな人、ねぇ。
友達の一言が頭に残る。赤也は心の中でその質問に答えていた。
美人、というより可愛かった。きっと、異性からの人気はあったんだろう。小学の時は勝つことだけを考えていたから、彼女の容姿を気にしたことは無かったが。小学の時の背は赤也と同じくらいだったけど、今は確実に赤也の方が高いだろう。あれから赤也の背は、ずいぶん伸びたから。の髪は長く、テニスの時にはいつも髪を結んでいた。邪魔じゃないのか、という赤也の問いかけに、走るたびに揺れる髪が楽しいから、とおかしな理由が返ってきたのを覚えている。きっと、今でも長いんだろう。
そして、性格は、負けず嫌い。

「…どうしたんだよ、…」
「ん?何か言ったか?」
「べっつにー」

あの負けず嫌いの。なんで、自分の前に姿を現さないのか。
赤也にはわからなかった。



(100925)