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6; 「ってかさ、なぁんで赤也はに敬語使わないんだよぃ」 「え?」 部活終わりの若干汗臭い部室。いつものハードな練習をこなしてきた赤也たちは、制服に着替えながら他愛もない話をしていた。勉強がどうだとか、昨日のテレビがどうだとか、今度の練習試合はどこだとか。その話の中で、ふと丸井が呟いたその台詞。それは今までの会話と全く関係ないもので、思いもよらなかった呟きに、当事者の赤也は声を漏らしてしまう。そしてその丸井の呟きに同意するよう、仁王が言葉を重ねた。 「あー、確かに先輩呼びしとらんのぅ、赤也は」 「だろぃ!?なんか不公平じゃね?」 「ちょ、意味わかんないっす!」 赤也は何か嫌な予感を覚えた。この二人がこんなにも意気投合するのは珍しい。自由奔放・マイペース仁王と、お気楽・前向き丸井。この組み合わせだと何かたちの悪い悪戯を仕掛けてきそうで、一刻も早く話題を変えようと頭をひねるも、いい話題が見つからない。赤也は助けを求めるため他のテニス部員に急いで視線を向ける。三強がいない今、ジャッカルと柳生が頼みの綱だ。 赤也の視線を受けながら、話を振られた柳生は視線をめぐらす。常に敬語を先輩後輩問わずに使っている彼の答えは、この場にいるほとんどにとって想像するのは容易いもので。 「確かに、先輩に敬語は使うべきですね」 「お、やっぱり柳生も丸井派じゃの」 「な、柳生先輩まで…」 そんなぁ、という顔をする赤也とは対照的に仁王の顔には楽しそうな笑み。赤也はがっくりと項垂れる。一体どんな悪さをされるのか…。もしかしたら変なペテンにかけられるのかもしれない…。と、入学当初からいままでの経験で、マイナスに考えていると、 「いままで敬語使ってなかったんだろ?急には無理なんじゃないのか?」 「ジャッカル先輩…!」 救いの手を差し伸べてくれたのはジャッカルだった。先輩どうしよう今先輩が神に見える…!と、いつもと態度が180度違う赤也にジャッカルは苦笑い。「お前、虫がよすぎるだろ」というジャッカルの言葉に、赤也は笑顔で気のせいだと言おうとした。が、それは、あの楽しそうな笑みを浮かべた詐欺師によって阻まれた。 「ほぅ、やっぱり赤也には先輩への敬意がなっとらんっちゅうことやの?」 「え、ちょ、いやいやこれは違いますって!」 「なぁにが違うんじゃ?こんなら、早いうちに敬語使うのに慣れとかんとなぁ?」 「そっ、仁王の言うとーり!」 「ちょっと、丸井先輩は引っ込んどいてください!」 「ん?なんの話だい?」 にぎわう部室に入って来たのは、今まで席をはずしていた三強たち。今まで三人で話をしていて、皆より部室に来るのが遅くなったため、まだ三人ともジャージ姿。興味深そうに尋ねる幸村に、丸井は意気揚々として答える。 「赤也がに敬語使うようにするんだぜっ」 「へぇ〜、赤也が敬語かぁ」 「ちょ、違いますから幸村部長!」 「ほぅ、赤也が自ら敬語を使うとは。さらに相手はか」 「いいデータが取れそうだな」 「そんな柳先輩まで…」 項垂れる赤也に、ぽんと肩に手をおく柳。だがそれは、別に赤也にとっては救いの手でもなんでもない。ジャッカルは苦笑いでこの状況を見てるし、他の先輩は赤也が敬語を使うということに対して推奨組だ。絶望的に近いこの状況。そして部長幸村から、とある爆弾が落とされる。 「あ、退院するから」 「…え!?」 皆の声が綺麗に重なる。急に知らされたその知らせに、皆の動きが一斉に止まり、そして幸村はそれを楽しそうに見ていた。 「退院とは、いつ決まったんですか?」 「けっこう前…かな?明日か明後日には退院」 「幸村君、俺らそれ初めて知ったんだけど…」 「うん、言ってなかったしね」 笑顔付きのその返事に、他の部員は慣れっこだ。柳は着替えながら「俺らも今日知ったしな」となんでもないように言っている。病院に行くのは各個人で好きな時に行くことが多いから、どうして幸村だけが知っていて他の部員は知らないのか。それはいつものように、謎のままで終わりそうだった。 それからは、が帰ってくるのかー、マネが帰ってくるぞー、とそれぞれいろんな反応を見せている中、赤也はゆっくりと仁王の様子を伺う。すると目がバッチリあってしまい、慌てて目を逸らす。あの目は、やばい。絶対何かする、何かを企んでる目だった。 が帰ってくることは嬉しい。ほんとに、すごく嬉しいけど、それに仁王の企みが被さるのは勘弁だ。敬語を使うという、ただそれだけで済むなら、まだいくらかましだ。赤也は複雑な気持ちで、着替える手を動かし始めた。 「(帰ってくるのは嬉しいけど、なぁ…)」 →
(120326)
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