彼女 と 後輩




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次の日。赤也の気分は最悪だった。
どの授業にも、いつも以上にやる気が起きない。いつもみたいな元気もない。休憩時間になっても椅子に座ったまま。友達に話しかけられても薄い反応。途中、先生に本気で心配された。
赤也はどうしてものことを考えずにはいられなかった。考えたくもないのに。

「(はぁ、ほんと最悪…)」

誰かに、何かに裏切られた時は、こんな感じなのだろうか。裏切られた、とは違う気もするが、それ以外の表現方法はわからなかった。
は見つかった。テニス部の、男子テニス部のマネージャーをしていた。入学当初からの目的はこれで達成された。けど、この脱力感は、一体。

「まじ、最悪…」

授業中に漏れた呟きを聞くものは誰もいなかった。


**********


放課後になって、赤也は部室に向かっていた。何も変わらず、いつも通りに部活をするんだろうと、赤也は思っていた。多分その前に、先輩たちからを殴ったことに対しての説教が待ってるんだろうけど。ため息をつきながら、鞄をもって教室を出ようとする。が、それは自分を呼ぶ声によって妨げられる。

「赤也!」
「…え、なんでがここにいるわけ?」

だった。教室の入り口にたっていた。
他学年の教室へ行ってはいけない。そんな規則もお構いなしだった。教室へなんでもないように入ってきて(もちろんこれも規則違反だ)、赤也の腕をとる。ふと昨日のことを聞いてきた友達に視線を向けると、なぜかにやにやしていた。若干混乱している赤也を置いて、は話し始める。

「テニスバックは持った?」
「あ、あぁ」
「よし、それじゃいくよ。時間がないんだから急いで」
「は、え、どこに?」
「放課後に行くとこと言ったら部室でしょ。ほら早く!」

に腕をひかれて走りだす。なんで急ぐわけ?何しに来たわけ?つか昨日のこと怒ってないわけ?の顔を見てみると、そこには痛々しく腫れ上がった頬があった。遠慮なく殴ったから、すごく痛かったはずだ。なのに、は湿布もしないで…。赤也はを殴ったことに関して後悔だなんて感じなかったが、今、この自分のしたことを見て、少しだけ罪悪感が生まれた。
走っているうちに、テニスコートに着く。まだ誰も来ていなかった。

「赤也。試合するよ」
「はぁ?アンタ何言ってんの」
「約束、忘れたわけじゃないでしょうね?」
「それはこっちの台詞だ。だからこそ、なんでマネージャーなんか…」
「いいから。これ逃すと、最低数カ月はできないよ」

そういっては自分の持っていたテニスバックから自分のラケットを取り出す。赤也はそれを見て目を丸くする。なぜならそれは、1年前、赤也とが最後にした試合の時使ったラケットだったから。そしてそれは、かなり前に、赤也がにあげたラケットでもあった。
赤也がのラケットに懐かしさを覚えている間に、は制服のままテニスコートに入る。コートの準備はなぜか、もうできていた。

「赤也、ラケット持って」

に言われて、赤也は急いで自分のを取り出す。ボールはが持っていた。
テニス部員は、まだ誰もこない。

「時間制限がついちゃうけど、いいよね」
「…別に」

赤也の返事に満足げにうなずく。赤也はそんなに疑問しかなかった。
――なんで、急にこんなことをするのか。今更、なんで。
赤也の思考を遮るように、は言い放った。

「赤也、言っとくけど手加減なんかなし」
「は、アンタ、俺が手加減しないと負けるに決まってんじゃん」
「負けない自信があるから言ってんの」

はそう、平然と言いのけた。それは、あからさまな、誰にでもわかるような挑発。でも赤也はそんなことどうでもよかった。
ただ、悔しさがあった。

「ふざけんな、絶対負かす!」
「上等」


試合が、始まる。



(100927)