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4; 「はぁ、はぁ」 ボールを打ち返す音が響く。 赤也は確信していた。やっぱり、は弱くなっていた。1年前は楽に返していたボールを、今さっきはなんとか返せた、という感じだった。ボールの威力も、スピードも落ちている。力をあげることが出来なくても、維持することはできるんじゃないか。やっぱりこの1年間、ほとんどテニスをしていなかったのか。 「っ!」 からボールが返ってくる。女と男の力の違いもあるのだろうが、赤也は納得がいかなかった。 赤也がボールを打ち返す。もちろん、手加減はなしだ。赤也はがどれだけ弱くなったのかを本人に実感させたかった。そして、赤也があれから、どれほど強くなったのかも。 2人の1年ぶりの試合。得点は、言うまでもなく赤也のリードだった。 そして、そんな試合を中断させる声が上がる。 「さん!」 「お前ら何しとるんじゃ」 柳生と仁王だった。は2人が来て、見るからに焦っていた。なぜかは赤也にはわからないが。 「切原君、今すぐやめたまえ!」 「…なんで」 「、まだ治っとらんのんじゃ。悪化するぞ!」 「仁王!お願い、っやらせて!」 「駄目じゃ!」 悪化?まだ治ってない? 赤也は意味のわからない会話に耳を傾ける。だが、そんなの気にしなかった。どうして2人しての試合を止めさせたいのかはわからないが、赤也にとっては邪魔でしかない。試合は続けた。 しかし、それは叶わなかった。赤也の打ち返したボールは、返ってこなかった。 「!」 仁王と柳生が駆け付ける。赤也は意味がわからなかった。 が、倒れた。 の息は上がりきり、足を抱えこむようにして横になっていた。柳生が心配そうにしている。仁王の怒鳴り声が響く。 「何やっとんじゃ!」 「に、おう…」 「なんでこんな時にテニスするん、そんな赤也と試合せんとだめなんか!」 「仁王君、落ち着いて」 「誰がこんな時に落ち着いてられるか!」 赤也は3人のやり取りを眺める。それしかできなかった。あの飄々としている仁王が取り乱しているだなんて、そんなには試合をやってはいけなかったのか。 茫然とする赤也。仁王がこちらを向く。その瞳は、内に静かな怒りの宿った、冷やかなものだった。 「赤也」 「…何ですか」 「ちょっとこっちきんしゃい」 仁王の言う通りにする。柳生はのことをただ心配していた。は苦しそうに丸くなって足を抱えていた。 赤也が仁王のそばに立つ。すると、何も言われず仁王に殴られた。俺、昨日のみたいだな、だなんて、暢気にそんなことを思った。 柳生がこちらを振り向く。その眼は仁王とよく似た、とても冷たいもの。 「仁王君、切原君を殴っても何もなりません。私はさんを保健室に連れて行きます。それまでに2人とも頭を冷やしてください」 嫌だ、と思った。を今、どこかへ連れて行かれたくなかった。 そんな思いで、とっさに柳生を呼びとめる。 「柳生先輩」 「何ですか、切原君」 「…俺が、を連れていきます」 柳生が静かに赤也を見る。あの冷たい瞳に見定めるように見られて、硬直する体。しばらくしてから「いいでしょう」と許可が下りる。思わず体から力が抜けた。仁王が柳生の名前を呼ぶ。 「柳生、でも」 「少なくとも、今の仁王君よりは切原君のほうが冷静です」 「…」 「切原君、幸村君達が来たときのことは私たちに任せてください」 「…お願いします」 赤也はの様子をうかがう。「大丈夫か」 だなんて、聞けなかった。 「…痛かったら、言えよ」 そういって赤也は、をゆっくりと、丁寧に背負う。柳生も手伝ってくれた。 赤也はいそいで保健室に向かう。できるだけに負担をかけないようにすることを忘れずに。 保健室に連れて行こうとし走り出す瞬間、背後から、とても小さい仁王の声が聞こえた気がした。 ← →
(100928)
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